逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX

第14話

 先生と営業部長が去った後の打ち合わせ室には、まるで楽しみにしていた初デートで『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を観てしまったかのような重苦しい空気が漂っていた。

 航は視線を床に落としたまま、一言も発しない。怒りを抑えきれず、私は航に詰め寄った。

「本気なの? また私に書かせようっていうの?」

 彼はポケットに手を突っ込み、天井を見上げて大きく息を吐き出した。

「……俺ひとりじゃ不安なんだよ。でも、これは大きなチャンスなんだ」

 少し躊躇してから、航は何かを振り切るように立ち上がり、姿勢を正して私に向かって深々と頭を下げた。

「成功させたいんだ。頼む、力を貸してほしい!」

 呆れて言葉を失いそうになる。どこまで自分本位なんだ、この人は。

「いろんな意味で無理。それに、私は優れた脚本家なんかじゃないよ。あなたも言ったじゃない、『田舎の生活』を私の名前で出していたら、誰も見向きもしなかったって」

 航はバツが悪そうに首元に手をやり、「ごめん」と小さくつぶやいた。
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