逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX

第16話

 日が傾く前に、蓮さんとふたりで近所のスーパーへ買い物に出かけた。

 全国各地から取り寄せた有機野菜やちょっとマニアックな輸入品、種類豊富な量り売りのデリなどを取り扱う、この街の胃袋を支えている店だ。

 並んで歩きながら、私はちらりと蓮さんの端正な横顔を盗み見た。

 ──どうやって長野行きを切り出そう。

 もちろん、結婚の契約をすり合わせた際に、両家への挨拶はマスト事項であるとお互い納得していた。

 しかしながら、「家族と地元の友だちに婚約者として会って!」というのは、なかなかどうしてハードルが高い。

「長芋とキャベツが新鮮だから、今日はお好み焼きにしようか」

 連さんが、大きなキャベツをひと玉持ち上げて提案する。

「やった! お好み焼き大好き!」

「じゃ、決まりだ。具材は……イカにしようか?」と、蓮さんが私の顔を覗き込んで笑う。

「うん、一番好き。どうしてわかったの?」

「薫が好きなのは、中南米料理のセビッチェ、台湾料理のイカ団子、イタリア料理のカラマリ・リピエーニ、それに僕がつくるイカと梅の酢の物と、イカと里芋の煮物」
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