本当の愛を知るまでは
離ればなれ
光星がアメリカに出発した日の夜。
花純は仕事を終えると、自分のワンルームマンションに帰って来た。

「ただいま。ふう……、なんだか久しぶりだな」

換気がてら窓を開けると、そのままベランダに出る。
夜空を見上げるといくつもの星が瞬いていた。

「綺麗な星。……光星さん」

呟いた途端、涙が込み上げてきて戸惑う。

「あれ、おかしいな。どうしたんだろ?」

慌てて指先で涙を拭った。

こんな感覚は初めてだ。
寂しい? 心細い?
切なくて、胸が痛む。

これまでは、一人気ままな方が好きだったのに。
光星が先週、離れるのは寂しいと言った時だって、自分は平気だったのに。

「光星さん、会いたい……」

心強い存在がそばにいてくれるようになったら、自分はこんなにも弱くなってしまったのだろうか。
触れ合う温かさを知ってしまったら、離れた時にこんなにも心細さを感じるようになってしまったのだろうか。

恋をしたら、一人では生きていけない弱い人間になってしまった?

「強くなりたい。光星さんを支えられるように」

ギュッと唇を噛み締めて涙を堪える。
光星は今頃飛行機の中。

「この星空を、光星さんも見てるかな……」

次に会える時までがんばろうと、花純はひときわ綺麗に輝く一等星に誓った。
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