本当の愛を知るまでは
突然出来た彼氏
「おはよう、森川さん」
「おはようございます、上条社長」

5日後の朝。
エレベーターホールでばったり会い、いつものように挨拶する。
あの日から特に何もなく、その場の冗談だったのかな?と花純は思い始めていた。

「今夜空いてる? 食事でもどう?」
「え、どうしてですか?」
「つき合ってるんだから、デートするのは普通でしょ?」
「つき合ってる……」
「あれ、覚えてないの? じゃあ、今夜改めて確認しよう。定時になったら俺のオフィスに来てくれる? それとも俺が君のオフィスに迎えに行こうか」
「いえ! それは困ります」
「ん、じゃあ待ってる」

そう言うと光星はスッとエレベーターに乗って去って行った。

(え、ほんとに? これっておつき合いって言うの? それとも上条社長は、私の変な結婚観を思い知らせようと、バーチャルな体験を提供してくれているだけとか?)

いずれにしても、もう一度よく話し合う必要がありそうだと、花純は仕事終わりに光星のオフィスを訪ねることにした。
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