本当の愛を知るまでは
友情の亀裂
「おはよう、原くん」

翌朝。
オフィスに出社して来た原に声をかけると、花純は後ろを覗き込んだ。

「おはよう、花純。どうかしたか?」
「うん。千鶴ちゃんは? 下で会わなかった?」

そろそろ千鶴も出社してくる頃だったが、姿はない。
花純は、今日こそ光星とつき合っていることを千鶴に話そうと思っていた。

「千鶴、今日から5連休だぞ。お盆の振り替えに有給くっつけて」
「あ、そうだったね! 忘れてた。えっと、グアムに行ってるんだっけ?」
「そう。昨日、楽しんで来いよって声かけたら、思いっきりハメ外してやるー! とか叫んでた。何かあったのか?」
「さあ、聞いてないけど」

きっと光星にフラれたからだろうか、と花純は視線を落とした。

「ヤケになってナンパしまくって、変な男に捕まらなきゃいいけどな」
「うん、そうだよね」
「さてと! 仕事仕事。千鶴の分もあるから、頼むぞ、花純」
「分かった。がんばるね」

千鶴が帰国するまでは話せないと気持ちを切り替え、業務に集中した。
昼休みになると、思い切って5階のカフェに行く。
滝沢に会えたら、はっきり断るつもりだった。
だが、またしても肩透かしを食らう。

「あの、今日は滝沢くんはお休みですか?」

レジでオーダーする時に、顔馴染の店長に聞いてみた。

「そうなんです。実家に帰省してて、来週まで休んでるんです」
「そうでしたか」
「あいつ目当てのお客さんが減っちゃってね。早く帰って来てくれないと、赤字になっちゃうよ。ははは!」

半分本気、半分冗談、といった調子で店長は笑っていた。
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