本当の愛を知るまでは
互いの存在の大きさ
「光星さん、ごめんなさい。私、あなたに冷たくしてた。なのに私をかばってこんなことに……。ごめんなさい。どうか目を覚まして」

救急車の中で、花純は光星の手を握りながら懸命に祈る。
病院に着くと、待ち構えていたドクターやナースの手で、光星のストレッチャーは運ばれていった。

(お願い、神様! どうか光星さんを守って)

両手を組んで、光星を見送る。
こんなにも自分にとってかけがえのない存在だったのだと、改めて思い知らされた。

救急受付に呼ばれ、震える手で光星の名前や連絡先を書くと、花純は廊下でひたすら処置が終わるのを待つ。
どれくらいの時間が経ったのだろう。

「付き添いの方、どうぞ」

ナースが呼びに来て、花純は「はい」と立ち上がる。
案内されて処置室に入ると、頭に包帯を巻かれた光星がベッドに横たわっていた。

(光星さん!)

花純は急いで駆け寄る。
傍らのドクターが容態を説明した。

「頭に鉄パイプが落ちてきたということだったので検査をしましたが、大きな異常は見られませんでした。傷口は縫合して、今は出血も止まっています。目が覚めてもしばらくは安静に。このまま3日ほど入院していただきます」
「はい、分かりました。ありがとうございました」

ドクターにお辞儀をして見送ると、ナースから入院の説明を受ける。
光星は病室に移動することになった。
花純は廊下に出ると、クロスリンクワールドの代表電話にかけ、臼井に繋いでもらう。

『もしもし、森川さん? 光星は?』
「臼井さん、ご連絡が遅くなって申し訳ありません。光星さんは今、みなと医療センターにいます。検査の結果も異常はなく、傷も縫合してもらって、今は眠っています。3日間入院となるようです」
『そうでしたか』

電話の向こうで、臼井がホッとしたように息を吐くのが分かった。

「臼井さん、光星さんは私をかばって大ケガを……。本当に申し訳ありません」
『何を言ってるんですか。あなたを守れて、光星は良かったと思っているはずです。それに光星も大事に至らなくて、私も安心しました』
「でも光星さんは、私のせいでケガを。私なんかの為に、こんな……」

声を震わせると『森川さん』と呼ばれる。

『そう思うなら、今度はあなたが光星を看病してあげてください。少しでも早く良くなるように』
「……はい、そうですよね。私、光星さんのそばにいます」
『ええ、そうしてやってください。光星の仕事の調整は、私が責任を持ってやりますので』
「よろしくお願いします」

今後のやり取りの為に互いの連絡先を伝え合い、電話を切る。
花純はすぐさま病室に戻った。
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