知らずに双子パパになっていた御曹司社長は、愛する妻子を溺愛したい

第二章 陰雨

　私たちは夏休み最後のビッグイベントであるお祭り企画を行っていた。日が暮れて、肌を刺すような日差しが隠れた時間帯から夏祭りはスタート。

　普段は職員さんや業者さんが車を停める駐車場にお祭り会場を設置した。ヨーヨー釣りや、ボール掬い、かき氷や焼きそばといった屋台も出ている。職員やボランティア、地域の方の協力で開催している。

　子どもたちも浴衣や甚平に着替えて、楽しそうな笑い声を上げていた。
　この時期は、私も浴衣を着ることにしている。毎年着ていたけれど、今年は高御堂さんもいるのでいつもより気合が入っていたりする。
　浴衣姿の私を見て、「綺麗だよ」とみんなの前で言うものだから、周りからからかわれて顔が熱くなった。

　スイカ割りや、花火などを終え、イベントの後片付けを始めた頃だった。

「颯士、やっと見つけた！」

　弾むような明るい声。女性らしい高くて甘い声が、やどりき園の駐車場に響いた。

　誰だろうと思って目を向けると、前髪をセンターでわけ、胸元まで届く艶やかな長い黒髪をした美人が、魅惑的な笑みを浮かべながら高御堂さんのもとに歩み寄っているところだった。