残念姫、王子に溺愛される
結ばれる
あっという間に、月日が流れて………

春休みに入って、恋羽は約束通り歩稀のマンションへ引っ越した。

「――――荷物は、こちらで最後ですね!」
引っ越し業者の配達員が微笑んだ。

「あ、はい!
ありがとうございました!
………これ、皆様でどうぞ?」

飲み物が入った袋を渡す。
「あ、ありがとうございます!
いただきます!」

帽子を取り丁寧に頭を下げて、配達員は去っていった。

「…………よし!
歩稀さんが帰ってくる前に、荷解きして片付けておかないと!」

歩稀はあいにく仕事。

『引っ越しなんて重労働、僕がいる時にして?』
そう言われたが、タダでさえあの若さで管理職として働き、休みの日にまで重労働をさせるのはやはり気が引ける。  

歩稀のことだ。
恋羽には一切させず、全部行うつもりに違いない。

歩稀と交際して約10ヶ月程。
その間に分かったことは、歩稀の愛情が少し重めなことと、とにかく過保護なこと、そして美的感覚がズレていることだ。

そのため平日に予約し、歩稀には『この日しか空いてなかったから』と伝えた。

“Kohane”と書かれたドアプレートがぶら下がった、ドア。
デスクとチェア、本棚、ロッキングチェアだけのシンプルな部屋。

実家での恋羽の部屋を、できる限り再現した部屋である。

歩稀が“ホームシックにならないようにしないとね!”と気遣ってくれたのだ。

ないのは、ベッドとソファだけ。

「………はっ!今日から、歩稀さんと一緒に寝るんだよね…//////」

“恋羽をギュッて、ホールドして寝たい”と言っていた。

もしかしたら、今日はそのまま……///////

(キャ~!!!///////)

恋羽は段ボールから、新しい下着を取り出した。

(……………
………って…何、期待してるんだろ…私…
ていうより…もし、本当に“そうなったら”ちゃんと出来るかな……?)

高校生の時の彼と別れてから、全くセックスをしていない恋羽。

騙されたという彼とは、シていないのだ。

「えーと……3?年くらいシてない…」

恋羽は、頭をブルブルと横に振った。


………って…私、何考えてるの!?


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