残念姫、王子に溺愛される
恋は盲目
“恋は盲目”とはよく言ったモノで、本当に恋羽以外何も見えない。何もいらない。

恋羽を誰の目にも、触れさせたくない……!


――――――――――
――――――…………………

スマホのアラームが鳴り響く、朝。

ダブルベッドに眠っている、歩稀と恋羽。
恋羽は、まるで抱き枕のように歩稀に包み込まれている。

「んん…朝…」
アラームの音で恋羽が目を覚まし、ごそごそと動き出した。

歩稀を起こさないように、腕の中から出てアラームを止めた。

恋羽の首の下に敷いていた腕をさする。
「痛いの痛いの…飛んでけ……」
呟いて、歩稀の頬にキスを落としベッドを下り、歩稀の身体に布団をかけ直して寝室を静かに出た。

カシャン…とドアが静かに閉まって、歩稀の目がパチッと開く。
「………行っちゃった…」

腕をさすりながら「痛いの痛いの飛んでけ」と呟いて、頭を撫でたり、頬にキスをしたりして布団をかけ直す。
毎朝行う恋羽のこの行為。

毎朝恋羽のアラームで歩稀も目を覚ましていて、この一連の行為に浸って幸せを噛みしめている。

特別なことじゃない。
ただ…腕の中にいてくれるだけで、幸せを感じられる。

こんな優しく温かくて、穏やかな気持ちを教えてくれたのは恋羽だ。


リビングに向かうと、キッチンで恋羽が鼻歌を歌いながら朝食を作っていた。

歩稀はフフ…と微笑んで、恋羽に向かって「恋羽!おはよ!」と挨拶した。

「あ!おはよう、歩稀さん!
ちょうど良かった!
もうすぐ出来るよ!」

歩稀はダイニングチェアに座り、タブレットを操作し始める。
ニュースや株価などを確認する。

「………よし…出来たっと!」
トレーに料理を乗せ、ダイニングテーブルに運ぶ。

「……/////」
(わぁ…綺麗…//////
相変わらずカッコいい…//////)

足を組み、タブレットを見ているだけなのに、様になるほど美しい。

まさに“天性の王子”だ。

「ん?
あ、出来た?」
視線を感じ、恋羽を見て微笑んだ。

「あ…//////うん!」

「ん?どうしたの?」

「ううん!」

「………」
料理をテーブルに置く恋羽を見つめ、手を掴んだ歩稀。

「え?歩稀さん?」

「何?」

「え?」

「何かあるんでしょ?」

「/////か、カッコいいな…って…思って…//////」

「え?(笑)」

「つい…見惚れちゃって//////」

「え?(笑)
フフ…ありがと!」

歩稀は、掴んでいた手に指を絡めて微笑んだ。


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