純恋〜ひとつの光〜
始まり


「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」

私は口元に笑みを浮かべてお客様を見送る。

「青葉さん、青葉さん」

一緒に働いている友希(ゆき)ちゃんに手招きをされ呼ばれる。

私は平田 青葉(ひらたあおば)。
今年で29歳を迎えるバツイチ女。
元夫との間には子供もいない。

抱えた多額の借金の返済に追われて、新しい化粧品も服も買えないどうしようもない女だ。

友希ちゃんは私の4歳下の25歳。
キャピキャピしてて今時の可愛いらしい女の子。

私にもこんな時代があったか?

ないな。

ないない。

振り返るもさっぱり思い当たらない。

「今のお客さん、青葉さん目当てですよ絶対」

「友希ちゃん。いい加減にしな。こんなバツイチのおばさん誰も見てないから」

ここはフラワーショップ マリー。
昼間の時間帯はほとんどここで働いている。
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