超人気美男子の彼女になった平凡女は平和な交際を求めて苦悩する

第54話 まさかの展開

本棚の向こうにテラスとアンセムがいることなど、完全に冷静さを失っているナミルとシンは気付くはずもない。

「なんだって言われても、わかんねーよ!」

「は?馬鹿にしてるの?眼中にないってこと!?」

「違う!」

「じゃあ、なんなの?言ってみなさいよ!」

「イラつくんだよ!!」

「は?」

「おめー見てると、イライラるんだよ」

「なによ、それ…酷すぎる」

シンの言葉の悪さには慣れていたつもりだったが、ナミルは激しく傷ついた。

「なら、尚更見なければいいじゃない」

ジワリと涙が滲んだ。

(こんな男の前で絶対泣きたくない!)

ナミルは歯を食いしばって耐える。

「俺だって見たくねーよ!」

更に酷い言葉を浴びせられ、ナミルは言い返す気力も失った。

「だけど、なんでか知んねーけど、目に入って来るんだよ」

「目障りって言いたいのね…」

「ちっげーよ!ああー!くそっ!わけわかんねーよ!」

シンは答えのない問題に苛立つ。

なぜ見てしまうのか。目で追ってしまうのか。
そうだ。自分はやはり、ナミルを目で追っているのだ。
なぜ?どうして?
考えたくなかった。認めたくなかった。

黙り込んでしまったシンを、ナミルは訝しげに見た。
顔を歪ませ、激しく苛立っているのがわかる。

「用がないなら、私いくから」

「なっ!」

立ち去ろうとしたナミルの進路をシンは慌てて塞いだ。
至近距離になる2人。
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