超人気美男子の彼女になった平凡女は平和な交際を求めて苦悩する

第65話 美男子は皆に感謝する

コンコン。

「どうぞ。お入りなさい」

寮長室のドアが開き、アンセムが入ってきた。
アンセムは一礼をしてドアを閉める。

「どうぞ、座って」

ソファに促すリナ。

「はい」

アンセムは腰を下ろした。
今日は寮長面接である。

「久しぶりね、アンセム」

「そうですね。見合いの話を打診されて以来でしょうか」

「そうね」

リナはにこりと笑った。

「早速、本題に入りましょう。希望シートを見せてもらったわ」

リナの前には、先日提出した進路の希望シートが置かれていた。

「もう1年、ここで過ごすのね」

「はい」

「それはもちろん、相手がテラスだからってことよね」

「その通りです」

アンセムの答えに、リナは満足気に深く頷いた。

「来年はテラスと2人で卒寮なのね」

「はい」

その答えを聞いて、胸を撫で下ろすリナ。

「あなたには感謝してもしきれないわ」

「感謝?どうしてですか?」

アンセムは首をかしげた。

「だって、私の厄介なお願いを引き受けてくれて、しかもきちんと目的を果たしてくれたんですもの」

「別に、寮長のために頑張ったわけではありません」

リナの物言いが癇に障り、尖った声が出るアンセム。

「そんなことはわかっているわ。
それでも、あの超問題児が片付いたんですもの。私の肩の荷が一つ下りたとホッとしてるんですよ」

「テラスは凄い言われようですね…」

「あら、誰よりも苦労したアンセムだったら、私の気苦労をわかってくれると思ったんだけど、見当違いだったかしら」

アンセムは大きなため息をついた。

「それが寮長の仕事だということは理解していますが、言葉の選び方が嫌です」

不快感を隠すつもりはない。

「うふふ。アンセムは潔癖なところがあるわよね」

しかし、笑顔で受け流すリナ。
寮長の貫禄である。
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