【コミカライズ】仕事の出来る悪役令嬢、薄幸王子様を幸せにアップグレードしておきました。

27 金山

「おい。モニカ。あれほどの金額を用意するなど簡単に言っていたが、本当に大丈夫なのか……?」

 私たちは離宮へと戻り、ウィリアムは変装を解いてソファに座っていた。

 ここに閉じ込められていた彼も、今では外出に慣れてしまっていて、物珍しく周囲を見まわし観察することもなくなった。

 そんな慣れない様子も、それはそれで可愛かったのだけれど、すぐさま溶け込めるような振る舞いを身に付けたウィリアムは本当に覚えが良い。

 成長スピードが異常なのだ。そういった優秀な人に対し、自ら教えられるということに、私は大きな喜びを覚えていた。

 これまでに幾度となく、新人教育の経験を積んでいたのは、そのためにあったのではないかと思うほどだ。

「ええ。大丈夫ですわ……これは、内密にしていただきたいのですが、まだ見つかっていない、とある金山の在処を私は知っているのです」

 小説の中でウィリアムとキャンディスの窮地(ピンチ)を救う、金山は王都近くにある。

 それも、とてもわかりやすい目印があるのだけれど、いまだに誰かに見つかっていないのは、金策に困った主人公のために用意されているという奇跡的な物語補正のせいだと思う。

「……お前のその、よく分からない知識を持っている話は、俺ももう既に慣れた。それで、これからどうするんだ。ラザルス伯爵家に仕える騎士でも、場所の確認のために送り込むのか」

 ウィリアムはそう聞いたので、私は首を横に振った。

「いえ。私がこの目で、実在するのか、どれほどの埋蔵量があるのか。現地を確認して来ます!」

 別にラザルス家に使える護衛騎士たちを、私は信用していないと言う訳ではない。

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