大好きなお姉さまが悪役令嬢?!処刑回避のためにひきこもったら、隣国の王子に狙われているようです?
4:大好きなお姉さまが狙われているようです
 エレノア・ケアードは、由緒正しい魔法貴族のケアード公爵家に生まれた。風の精霊と契約を結ぶ父、水の精霊と契約を結ぶ母の間に生まれたエレノアは、幼いころから風の精霊に懐かれていた。通常、学園に入学する十二歳前後に特定の精霊と契約をし、特定の属性の魔法を使えるようになる。
 例えば風魔法を使う父は、水を自在に操ることはできない。水の壁を築いたり、何もないところに水を湧かせたり、そういった魔法だ。逆に、水の精霊と契約を結ぶ母は、突風を吹かせたり、逆に風をやませたりすることはできない。自然の摂理をねじ曲げようとする力こそ魔法とされ、契約した精霊の属性によって発動する魔法が異なる。
 だから自然の摂理を曲げない範囲であれば、火を起こす、土を耕す、水から不純物を取り除く、空気の流れを変えるといった内容であれば、生活魔法の一種で通りすがりの精霊が力を貸してくれるのだ。
 その生活魔法は、誰が教えるわけでもなく、成長するに従い自然と使えるようになる。
 しかしエレノアは、生まれたときから泣けばひゅっと風が吹き、笑えば穏やかな風が頬をなでた。このままでは風の精霊が気まぐれを起こし、ひゅっと吹く風が嵐になりかねないと思ったオリバーが、エレノアが五歳のときに風の精霊との契約をすすめた。
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