それは麻薬のような愛だった
最初で最後の愛だった
2年後。
30の年を迎えた雫は久しぶりに地元の地を踏んだ。
両親や義両親との1年ぶりの対面を喜び、そして雫は今回の帰省の目的であるホテルの会場へとやってきていた。
「あっ、雫だ!久しぶり〜!」
エントランスホールで待ち合わせていた友人に声をかけられ、雫は嬉々として駆け寄る。
高い声を上げながら両手を合わせ、友人との再会に胸を躍らせた。
「ていうか、おかえりの方がいいかな?わざわざ今日の為に日本に帰ってきてくれたんでしょう?」
「うん。でも両親にも子どもの顔を見せてあげたかったし、久しぶりにみんなにも会いたかったから」
「分かる!うちも一緒〜」
「家族とか子どもいると、こんな機会でも無い限りなかなかみんなで集まれないよね」
雫は今日、30の節目になった祝いとして開催された10年ぶりの同窓会に参加していた。
普段各々が遠方に住んでおり、かつ伊澄の転勤についていきアメリカへ渡っていた雫は久しぶりの友人に会うため、家族で帰国していた。
「それで…麗しの旦那様はどちらに?」
かつて伊澄のファンのように振る舞っていた友人の一人が雫の周りをきょろきょろと見回しながら問いかける。
そんな彼女に雫はくすりと笑いながら「残念ながら」と言った。