それは麻薬のような愛だった
酩酊の真実
美波と話をした翌月。
雫は事務所の給湯室にて、頭を下げるその同期と対峙していた。
「合コン?」
怪訝な顔で返せば、涙目の美波が「違うよ!」と勢いよく詰め寄る。
「異業種交流会!先月話したでしょ?男女数人で集まってご飯とお酒を楽しむの!」
「だから合コンじゃん」
「もー!今どき合コンなんて死語だよ死語!ねえ雫お願い!今日だけでいいから参加してよ〜!」
「やだよ面倒くさい」
擦り寄る美波をバッサリと切り捨て、雫は手に持っていたコーヒーを一口啜る。
どうやら一応交流会と銘打ってはいるもののその実合コンには変わりないので、男女比が合わないのは都合が悪いらしい。
だというのに今朝急に体調不良でのドタキャンが出てしまった為、これまた迷惑なことに身近にいた雫に白羽の矢が立ってしまった。
「お願い!せっかくの出会いの機会を逃したくないんだよぉ」
「他当たってよ、私興味ないもん」
「雫はそうかもね!でも私は違うの。30までに結婚したいのにもう27なんだよ?焦るじゃん!」
改めて聞く情報にふーんと返す。確かに目標とする年齢がそこならば、美波が焦る気持ちも分からなくは無い。
だがここ最近やっと半年近く続いた繁忙期も終わりが見え、今週も残業続きで正直疲れているのでせっかくの貴重なプライベート時間を無駄な時間に費やしたくはない。
それに毎年クラス替えやら何やらで新しい出会いに胸を膨らませていた学生時代とは異なり、社会人で目新しいものに触れる機会が減った今、よく知らない人間の中に入る事が億劫になっている。