ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~

わたしのもの

 どうして安積さんがそこで携帯電話を取り出すの?

(あ! 私に電話?!)

 そう思ってみたものの私の携帯電話が震えることはない。出て行くことも出来ずに隠れて様子を見続ける私は、周囲からはどう映っているだろう。明らかに変なヤツだ。

(なになに? 何しているの?)

 どこかへ携帯をかける安積さん、その横の女の人が鞄を漁りだして照れて笑いだす。

 それで確信した、あの女の人が安積さんに近寄って何をしたかったのか。あれは確実に確信的な逆ナンだ!

(あざとい!)

 それが分かったら躊躇していた足がいきなり走り出して私は柱の影から飛び出した。

「やだぁ、ありましたぁ」

「……あったんですね。それは良かった」

「ありがとうございます~。それ私の番号です、またお電話してもいいですか?」

「は?」
 
 そんな会話が近寄るほどに聞こえて思わず安積さんの腕に飛びついた。
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