ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~

秘密のレシピ

 最後にイルカショーをふたり並んで座って楽しんだ。

「デート、ありがとうございます……」

 ぽつりとこぼした言葉に安積さんが首を傾げて見つめてくる。

「……こんな我儘。ずっと変なことばかり言って、私みたいな人間のことおかしいと思ってますよね」

 震える声で問いかけるものの、安積さんの顔を見る勇気はなかった。握りしめた拳、スカートをきゅっと握りしめてその手の甲を見つめたまま思いをこぼす。

「無理言って、押し付けてるのはわかってます。安積さんの優しさに甘えてるって。分かってるんですけど……」

 寄り添ってもらえるほど、申し訳なさもある。隠している気持ちがあるんだ。諦めるなど嘘、思い出にしたいから……そんなのは建前だ。私の本音は優しさを利用している邪な気持ちなんだから。

「楽しかった? 今日」

(え?)
 
「は、はい」

「それって水族館が? 俺と過ごしたのが?」

「……」

 そんなの、決まっている。
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