ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
第五章

思い出のバースデー

 ――祝わせて。

 そんな言葉を告げられて息を呑む私。それよりも……。

「なん、なんでそれを……」

「さっき聞いた」

 さっき……で、後輩の顔が浮かんだ。社内で誕生日の話をしたのは後輩しか心当たりがないからだ。

「言わないつもりだった?」

「そ、そういうわけじゃ……」

 言い淀むとギュッと包む手に力が込められて顔がかぁぁぁっと熱くなるのがわかる。

 (安積さんに手をっ……手を包まれているっ!)

 予想外の出来事にテンパる。ハッキリ言って誕生日などどうでもいいのだがっ!
 
「わ、忘れていただけです」

「誕生日を?」

「ふ、普通に、本当に忘れていて……そんな……一緒に過ごしてもらえるとか……考えたことも」

 正直に伝えると黙られてしまった。
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