ダーリンと呼ばせて～嘘からはじめる三カ月の恋人～

始まっていない

　気持ちがどこにも消化できずにいる。安積さんから告げられた転属の話に戸惑いはこえて絶望感に苛まれる。

　たった三カ月だ。三カ月後には安積さんはこの部署を離れる。部署だけではない、日本まで離れてしまうのか。

（そんなこと、ある？）

　物理的にも離れてしまう現実は私の心を掻き立てた。悲しいよりも悔しさが湧いて、その感情はどうしたって自分自身に対してだ。

（いいの？　このままで。私はこのままでいて本当に後悔しないの？）

　その問いかけをずっと脳内で繰り返しながら、それでも何をどうすればいいのかと繰り返しては沼るだけで。

　残された限られた時間、その時間をどうしたって無駄にはしたくなかった。

　部下として、今だけ築ける関係でそばにいれる道。告白して振られたらきっとそれも自ら手放して気まずいだけの三ヶ月。

　別れる直前に告白して振られた方がマシ？　それでもなんだか最悪の思い出で塗り替えられて切なさが増しそう。そしてもう本当にさらっと再会できることもなくなりそうだ。