ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~

閉じ込めたい思い

 大人の恋愛、知らなかったときめきの数々が走馬灯のようによみがえる。

 私がしたい恋愛をしたらいい、安積さんはそう言ってくれて私の我儘に寄り添ってくれた。

 その思い出の数々を忘れたくない、忘れたいわけがない。

 忘れられそうにない――でも。


「我儘たくさんありがとうございました。いっぱい思い出できました。私の憧れていた恋愛……夢みたいでした」

 何より夢みたいだったのは何が、ではない。誰と、だ。

 好きな人と、安積さんと過ごせた時間こそ私がしたかったことのすべて。

 一緒にいたかった、ただそれだけだった。

「忘れましょう? 期間限定の今だけの恋人のことなんか、覚えてなくていいんです」

 抱きしめられた熱は二度と感じることはできないのに、ひとりになったらその温もりを思い出すの? 
< 208 / 248 >

この作品をシェア

pagetop