ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~

甘えていいなら

 それでも人並みに泣いた夜だった。

 振られた経験は多くない。なぜならそんな告白などしてきた人生ではない。なんなら自分から告白して振られたのは初めてなのだ。こんな風に思いを募らせて面と向かって告白したのは安積さんが初めてである。

 緊張もした、振られる覚悟がなかったわけじゃない。うまくいくと、自惚れていたわけではなかったのに予想以上のショックを受けて自分が何様なんだと呆れても来る。

 どこかで期待はあった。

 むしろ若い子に言い寄られて嬉しがってくれるかもと、私は逆に年齢が売りになるとまで思っていたのに。

(恥ずかしい)

 自分の浅はかさと自惚れにうんざりだ。

 どうにもならない年齢の壁が理由になるのか、それはどうしても私には越えられないものだ。私自身の問題だけれど、それだけを理由にされるのはどうしたって納得が出来なかった。

 もっと私自身の違う理由なら努力も諦めも出来たのかもしれない。

 ただ若いだけで、ひとまわりもちがうという年齢だけで「無理」と断られるのは納得が出来ない。
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