ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~

初めての恋人

 これは実質私の初めての恋かもしれない。

 大好きな人とお付き合いする経験、それは人生で初めてだ。

 いざそんな関係に発展したら私こそより年齢差を意識してしまったが、安積さんは言ってくれた。

 ――大人じゃなくて、いいんだよ。

 私がしたい恋をしたらいい、そんなセリフ言うの卑怯じゃない? そばにいることを許されただけで幸せだったのに、私の望むことに応えると言ってくれた。それは安積さんなりの誠意なのかもしれない。

 好きにはなれないから……という言い分も含めての。

 それでもやはりどうしたって私にはチャンスだ。この限られた時間、大好きなひとと恋人として過ごせる時間。

 絶対に大事に過ごしたい。その時間の中で安積さんと本当に思いを通わせ合えることができたら……思い出だけで終わることはない。

 それでもなかなか距離は縮まらなかった。

 毎日仕事で顔を合わせるものの、オフィス内では秘密の関係。ソワソワしたりちらちら盗み見する私とは違う。安積さんは至ってポーカーフェイス。誰も私たちが秘密の恋人だなんて気づかないし思うことすらないだろう。それくらい関係の変化がない気がする。
 
 安積さんは仕事も抱えて、しかもここを去るために山ほどの業務を抱えているのだろう。

 毎日残業している感じで連絡が取れるわけでもなく。夜に甘い電話が出来るかも、なんて夢は瞬間で打ち砕かれている。
 

 いつどこで、私たちは”恋人”になれるの?
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