ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~

鈴の音の調べ

 安積さんが大事にしている猫に好かれるなんて。そんな嬉しい出来事はあるだろうか。

 (モモちゃん……私のこと受け入れてくれたの?)

 なんだかそれはすごくラッキーで好感度まで上がりそうだと邪な気持ちまで抱いてしまう。

「綺麗な毛並みですね……ああ、なんか猫の感触久しぶりで……可愛い」

 ギュッと抱きしめて頬で撫でながらモモちゃんの熱を感じる。ダメだとは思いつつも私のスキンシップが激しくなってしまう。いつか腕の中から飛び出されるかもしれないとは思うのだが、感情が抑えられない。

「ふふ、かわいい〜フワフワだね、君は……んっ」

 逃げ出されると思っていたのにまさかのモモちゃんが私の頬を舐めてきて。

「え、ぅんっ」

 ザラつく舌が顎下を頬をと舐め始める。

「んっ、まっ……ぁ、ちょっ」

 私が飼っていた猫は人から譲り受けたものですでに成猫になっていて、今のモモちゃんよりも明らかに成長していた猫だった。記憶の限りある猫舌の乳頭のざらつきはなかなか強度なものだったのだが。

 (なんか、モモちゃんの舌はそこまでザラザラしないんだな……)
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