おてんば男爵令嬢は事故で眠っていた間に美貌の公爵様の妻(女避け)になっていたので土下座させたい
目標の紙
十八歳になったセイラはガリガリだった頃より少し女性らしい曲線が目立ってきた。発育期はまだ終わっていなかったらしい。
いつものように夜九時頃にイェルガーが来る。
なんかじっと見てくる。本を読んでいたけど気になるので聞いた。
「なんでしょう?」
「少し良いか?」
「はい」
ベッドに上り隣に座ってきた。こんなことははじめてなので戸惑う。
イェルガーは、しわしわの四つ折りにされた紙を差し出す。
それは捨てたはずの、セイラの目標の紙だった。セイラの字で「夫婦」と書いてある。
いつの間に拾ったのだろう。
「なるか?」
「え?」
「本当の夫婦になれば良いんだろう?」
「はあ……それはご自身が却下されたことでしょう」
セイラはうつ伏せになり、顔を伏せた。
イェルガーも寝転んだようだった。
「前は、山猿の姫が俺のこと好きじゃないからひいただけだ。今もそうだけど、それでもいい」
「ほう! 健気ですね」
セイラが見ると、目を瞑っている。
「……少しずつでいい、慣れろ」
もしかして酒に酔っているのだろうか。お酒の匂いを確認しようとすると、イェルガーは目を開けて片手でセイラの両頬をむにゅっと掴んだ。
「少しずつ」
そう言ってセイラの顔を遠ざけた。
たぶん夫婦になる覚悟ができていないのはお互い様のようだった。
(イェルガーも私のこと好きではないんだろうな)
愛妻家キャラで錯覚しそうになるが、それだけは鈍いセイラでもなんとなくわかった。
執事が呼びに来て、イェルガーが部屋から去ったあと、しわくちゃの紙を壁に貼った。
いつものように夜九時頃にイェルガーが来る。
なんかじっと見てくる。本を読んでいたけど気になるので聞いた。
「なんでしょう?」
「少し良いか?」
「はい」
ベッドに上り隣に座ってきた。こんなことははじめてなので戸惑う。
イェルガーは、しわしわの四つ折りにされた紙を差し出す。
それは捨てたはずの、セイラの目標の紙だった。セイラの字で「夫婦」と書いてある。
いつの間に拾ったのだろう。
「なるか?」
「え?」
「本当の夫婦になれば良いんだろう?」
「はあ……それはご自身が却下されたことでしょう」
セイラはうつ伏せになり、顔を伏せた。
イェルガーも寝転んだようだった。
「前は、山猿の姫が俺のこと好きじゃないからひいただけだ。今もそうだけど、それでもいい」
「ほう! 健気ですね」
セイラが見ると、目を瞑っている。
「……少しずつでいい、慣れろ」
もしかして酒に酔っているのだろうか。お酒の匂いを確認しようとすると、イェルガーは目を開けて片手でセイラの両頬をむにゅっと掴んだ。
「少しずつ」
そう言ってセイラの顔を遠ざけた。
たぶん夫婦になる覚悟ができていないのはお互い様のようだった。
(イェルガーも私のこと好きではないんだろうな)
愛妻家キャラで錯覚しそうになるが、それだけは鈍いセイラでもなんとなくわかった。
執事が呼びに来て、イェルガーが部屋から去ったあと、しわくちゃの紙を壁に貼った。