おてんば男爵令嬢は事故で眠っていた間に美貌の公爵様の妻(女避け)になっていたので土下座させたい

背中の傷

それからしばらくは、子どもの頃の話、家族の話、嫌いな人の話などをした。
そろそろ話が尽きてきた頃。

「背中の傷を見せてくれないか?」

唐突にそんな話になった。セイラには事故で頭と背中に傷がある。

「良いけど、そんなものを見てどうするの?」
「ただの確認だ」

セイラはイェルガーに背を向けて服の前のボタンを外しはじめた。
背中には首のつけ根から肩甲骨の辺りまで傷があった。そこだけ色が違う。
頭の傷は髪の毛で隠れるが背中の傷は大きかった。

長い髪の毛を前に移動させる。

「なんの確認なの?」
「大事なことだ。触っても良いか?」

セイラにはよくわからなかったけど大事らしい。ため息をつきたくなった。

「……どうぞ」

イェルガーは少しずつ触れてきた。傷をそっと撫でるように何か確かめていた。

「んふ、ちょっと! くすぐったい!」

セイラが怒ると、離れた。変な声出た、恥ずかしい。

「もう大丈夫だ」

その言葉でセイラは素早く服を着た。

「なんなの?」

いぶかしみを込めた目で見る。

「想像していた程、酷いものではないな」
「どんな想像してたの、怖っ!」
「主治医の許可がおりた」
「許可が?」
「寝室が明日から一緒になる」

セイラはなんとなくわかった。

「覚悟しておけ」と言う捨てゼリフを残して戻って行った。

夜十時一分セイラは震えた。
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