地の果てに咲く花

楠見 桜駒ーkusumi sakomaー


「ママ〜。ワイシャツ何処ー?」

朝。

私は部屋のドアからひょこっと顔を出し、リビングで料理しているママに尋ねる。

「えー……あ、外に干してるかも」

ママは、ん〜と唸りながら答えた。

「はいはい〜」

そう言ってベランダに出る。

青い空に白い雲。

「いい天気ー……」

綺麗な空は私とは大違い。

軽く目を細めてしまったのに気づいて、慌てて頰を揉んで、笑顔を作った。

笑っていれば、大抵のことはなんとかなる。

泣けば怒鳴られる。反抗すれば殴られる。

だから私は今日も笑い続けるんだ。

干してあったワイシャツを取って、部屋に戻った。

パジャマを脱いで、制服に着替えた。

鏡の前でくるっと周り、身だしなみを確認する。

「よし!今日も完璧!」

手入れの行き届いた長い黒髪。お金がかかっているであろう私立の制服。

愛されているであろう少女の笑顔が、そこには映っていた。
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