地の果てに咲く花
〈美宵said〉
「ねえ、桜駒大丈夫かなあ」
「あんな苦しそうに、」
桜駒が救急車に乗せられたあと。
体育館はもう授業できる雰囲気ではなかった。
あたしは、桜駒のこと勿論心配だけど、引っかかることがあったんだ。
桜駒は意識を失う前、こう言った。
『っ、おに、ぃちゃ……ん……』
“お兄ちゃん”。そう言ったんだ。
確かに、桜駒にはお兄さんがいる。
でも彼女が言ったのは、彼らではないだろう。
だって桜駒は、一番上のお兄さんを『兄さん』、二番目のお兄さんを『雷稀兄』と呼んでいたはずだ。
きっと間違っても『お兄ちゃん』などと言わない。
じゃあ誰?
桜駒が何か隠していること。家族に触れてほしくなさそうな態度。お父さんに似ていない理由。PTSD。呼吸困難。桜駒の部屋にあった写真。一緒に笑っていた男の子──。
「……まさか」