極上の甘やかされ同居生活は溺愛のはじまり~大失恋したら女嫌いだったはずの凄腕心臓外科医がなぜかグイグイ迫ってくるのですが、これはいったい何事ですか?~
予期せぬ訪問者
【予期せぬ訪問者】


 二月初旬。
 外を吹く風はまだ冷たい。
 春の訪れはまだまだ先だけれども、気持ちが高揚しているのは直に迫ったバレンタインのおかげだろうか。
 チョコレートの甘く(ほう)(じゅん)な香りが私の()(こう)をくすぐる。
 お店のショーケースには、フォンダンショコラやバナナチョコタルト、またテリーヌなどのチョコ系のケーキが多く置かれ、中央の焼き菓子コーナーも、色とりどりのボンボンショコラやオランジェットなどのバレンタインギフトで埋め尽くされている。
「陽葵さん、彼氏さんにバレンタインチョコあげたりするんですか?」
 その日の仕事を終え、更衣室で着替えていたら、ちょうど休憩に入っていた梨花ちゃんに声を掛けられた。
「んー、作ろうとは思っているんだけど、まだなににするかは悩み中なんだよね」
 バレンタイン前日に運よく休みが取れたので、その日に作って十四日の夜に冬哉くんにあげるつもりでいる。
「そうなんですか。まぁ、悩む時間も楽しいですよね」
 まさに梨花ちゃんが言うとおり。
 
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