極上の甘やかされ同居生活は溺愛のはじまり~大失恋したら女嫌いだったはずの凄腕心臓外科医がなぜかグイグイ迫ってくるのですが、これはいったい何事ですか?~
甘く濃密な時間に酔いしれて
【甘く濃密な時間に酔いしれて】

 まとまった休みが取れた、翌年の七月下旬。
 俺と陽葵はパリを訪れていた。
 この時期のパリは朝晩多少冷え込むが、日中は二十度前後と比較的暖かいので毎日快適に過ごしている。
「今日も晴れてよかったね」
「ああ、そうだな」
 ハネムーンにパリを選んだのは、陽葵が本場のスイーツを食べてみたいと言ったから。
 貴司たちの新婚旅行先もパリだったのだが、その写真を見て陽葵はパリへの憧れを募らせていたみたいだ。
 初日から二日目にかけては凱旋門やルーブル美術館、ベルサイユ宮殿やモンサンミッシェルなどの有名な観光地を巡った。そして、昨日からはゆっくりと街中を巡り、食べ歩きや買い物を楽しんでいる。
「あそこだ! すでに行列ができてる」
 腕を絡ませながら歩いていると、陽葵の期待を滲ませたような声が響いた。
 エッフェル塔を目の前に望む、トロカデロ広場に面したミントグリーンと白を基調としたお洒落なカフェ。
 スイーツマニアの陽葵から聞いた情報によると、ここは手作りスイーツが大人気の老舗店らしい。

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