極上の甘やかされ同居生活は溺愛のはじまり~大失恋したら女嫌いだったはずの凄腕心臓外科医がなぜかグイグイ迫ってくるのですが、これはいったい何事ですか?~
独白
【独白】
ついさきほど車数台が絡む玉突き事故があって、ひっきりなしに病院に患者が運び込まれてきている。救命救急科のスタッフだけでは手が回らないので、応援に駆けつけたところだ。
「患者は?」
手を洗い、手袋をはめながら近くにいた看護師に声をかけた。
「あっ、冬哉先生、来ていただいてありがとうございます。五番処置室にいる五十代の男性です」
「了解です。ありがとうございます」
礼を言ってから処置室に入り、処置にあたっていたスタッフの話を聞きながらカルテに目を通す。
鎮痛剤を投与済みか。
そのおかげで、今は容態が安定しているようだが……。
CT画像を確認すると、上行大動脈に偽腔が確認できた。
恐らくA型の急性大動脈解離だろう。
この病気は時間が鍵となる。
容態が急変し、あっという間に亡くなってしまうこともある。
「すぐに手術室の手配をお願いします。それからご家族に連絡を。俺は麻酔科の先生に掛け合ってみます」
「分かりました」
とにかく迅速に対応し、救命に尽力する。
それが医師としての使命だと思っている。
俺の名前は、一条冬哉。今年三十二歳になる心臓血管外科医だ。
父親は病院を経営していて、双子の兄である真冬は、父親が院長を務める病院で救急医をしている。
父親にそろそろ日本に戻ってくるようにと言われ帰国したわけだが、父の弟が院長を務める系列病院を選んだのは、父親に口うるさく縁談話を持ち掛けられ、それをかわすのがうざかったのと、真冬がいる病院で働きたくなかったから。
これは偶然なんだが、結果的に陽葵の近くに住めることになったので、俺にとっては好都合だった。
俺の父親は利己的で上昇志向が強い人だ。俺たち兄弟も常に結果を求められ、小さい頃から競い合わされてきた。
勝った方が偉い。正義だ。という、父の教育方針に母は猛反発。
常に言い争いが絶えず、ついには価値観の違いから離婚して、俺たち兄弟を置いて家を出ていった。
あれは確か、俺が七歳の時だ。
ついさきほど車数台が絡む玉突き事故があって、ひっきりなしに病院に患者が運び込まれてきている。救命救急科のスタッフだけでは手が回らないので、応援に駆けつけたところだ。
「患者は?」
手を洗い、手袋をはめながら近くにいた看護師に声をかけた。
「あっ、冬哉先生、来ていただいてありがとうございます。五番処置室にいる五十代の男性です」
「了解です。ありがとうございます」
礼を言ってから処置室に入り、処置にあたっていたスタッフの話を聞きながらカルテに目を通す。
鎮痛剤を投与済みか。
そのおかげで、今は容態が安定しているようだが……。
CT画像を確認すると、上行大動脈に偽腔が確認できた。
恐らくA型の急性大動脈解離だろう。
この病気は時間が鍵となる。
容態が急変し、あっという間に亡くなってしまうこともある。
「すぐに手術室の手配をお願いします。それからご家族に連絡を。俺は麻酔科の先生に掛け合ってみます」
「分かりました」
とにかく迅速に対応し、救命に尽力する。
それが医師としての使命だと思っている。
俺の名前は、一条冬哉。今年三十二歳になる心臓血管外科医だ。
父親は病院を経営していて、双子の兄である真冬は、父親が院長を務める病院で救急医をしている。
父親にそろそろ日本に戻ってくるようにと言われ帰国したわけだが、父の弟が院長を務める系列病院を選んだのは、父親に口うるさく縁談話を持ち掛けられ、それをかわすのがうざかったのと、真冬がいる病院で働きたくなかったから。
これは偶然なんだが、結果的に陽葵の近くに住めることになったので、俺にとっては好都合だった。
俺の父親は利己的で上昇志向が強い人だ。俺たち兄弟も常に結果を求められ、小さい頃から競い合わされてきた。
勝った方が偉い。正義だ。という、父の教育方針に母は猛反発。
常に言い争いが絶えず、ついには価値観の違いから離婚して、俺たち兄弟を置いて家を出ていった。
あれは確か、俺が七歳の時だ。