石楠花みどりはあえて男を作らない~スパダリ編集者は愛しの作家に身を捧げすぎる~
第八章 俺の家に来る?
パーティーから二カ月、新作の出版を二カ月後に控え原稿が完成した。表紙はこれまでも翠さんとタッグを組んできた人気クリエイターが描き上げてくれた。

タイトルは『大正浪漫恋謳(こいうた)・花薫る風の便りに』に決定。作中に出てくる数多くの花と、ヒロインの名前〝カヲル〟をもじっている。

あとは印刷所に依頼して、営業や広報と調整を続けつつ発売日を待つだけ。そんなとき――。

「誓野さん。ずーっと気になりつつも聞けなかったんですが」

北桜出版文芸編集部のオフィスで拡販材料の確認をしていると、吉川さんがにやにやしながら距離を詰めてきた。

「みどり先生とお付き合いされてるんですか? いや、十中八九してるんだろうなあとは思ってるんですけどね~? ふたりを見てるとそんな感じがしますし、みどり先生ご自身もなんだか垢抜けて女子になったなあって。実は授賞式の日も見つからないように、こっそりおふたりを見ていたんですけど、すごーくお似合いでしたから」

意外とそういう話が好きなのか、まくし立ててくる吉川さん。

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