石楠花みどりはあえて男を作らない~スパダリ編集者は愛しの作家に身を捧げすぎる~
第二章 お触りは許可制で
「だから男は嫌だって言ったんです! なんだってあんな人を後任にしちゃったんですか……」
翌日の午前十一時。寝間着姿のまま携帯端末に向かって泣きついた。
相手は元担当の吉川さん、四十一歳。
現在妊娠四カ月でまだまだ産休には早いけれど、編集部内で〝大きいお腹で作家につくのは難しいのでは〟という話が持ち上がり、社内勤務に転向したそうだ。
《みどり先生、一度は納得していたじゃありませんか。この人なら大丈夫かもって》
「だってリクルートスーツに黒縁眼鏡をかけて、いかにも真面目そうだったので」
もしも髪を染めていたりお洒落スーツを着ていたり高級時計をしていたり、少しでもチャラさ――過去に痛い目を見せられた男性の面影を感じたなら、担当をお断りしていたと思う。
でも誓野さんはいかにも真面目に見えたから、信じてみようって気持ちになったのだ。でも――。
《真面目じゃなかったんですか?》
「真面目な方でしたけど……」
無茶を言っている自覚はありつつも、もごもご言い訳する。