『イケメン警察官、感情ゼロかと思ったら甘々でした』
それでも彼は冷たくて
神谷――という名前を、美香奈はあの夜から何度も頭の中で反芻していた。

初めて話したのは、ほんの数十秒。
たった一言二言の会話だけなのに、彼の声と姿が、なぜか頭から離れなかった。

優しいわけじゃない。
むしろ、無愛想で冷たい印象の人だった。表情も声も抑揚がなくて、話しかけやすいタイプには見えなかった。

でも、不思議と“怖くなかった”。

人間って、本当に危ない人を見ると、直感で拒否反応が出る。
あの男の視線を感じたときとは、まったく違っていた。

(どうして、あの人のこと、気になってるんだろう……)

そう考えた瞬間、恥ずかしくなって、胸の奥がくすぐったくなる。
それでも、“また会えたらいいな”と思ってしまう自分がいた。
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