『イケメン警察官、感情ゼロかと思ったら甘々でした』
夜の静寂が崩れる時
(……巡回、他の方だったんだ)

深く呼吸をして、鍵を取り出す。

だがそのとき――
背後に、わずかな気配を感じた。

振り返る。
一瞬、何かの影が建物の角に消えるのが見えた気がした。

「……!」

息を呑んで、辺りを見回す。
けれど、そこにはもう何もない。

(……気のせいじゃ、ない)

肌が、粟立つ。

足早に家に入り、鍵を閉めようとする。
その瞬間、外側から扉がドンッ!と強く叩かれた。

「――きゃっ!」

美香奈が身を引く間もなく、扉が勢いよく押し返される。

わずかに閉まりかけていたドアの隙間に、
何かがねじ込まれたような衝撃――
重い力が一点にかかる音と同時に、ロックが弾けた。

「やめっ……来ないで――っ!」

美香奈の声も虚しく、
扉はそのまま大きく開ききり、犯人の腕が彼女の肩を強く押し込んでくる。

背中が床にあたる音、倒れ込む重み。
玄関の内側へ、文字通り“押し倒される”ように侵入されていた。

彼女の指先から鍵が滑り落ちる。
――もう、外との繋がりが絶たれた。

叫ぼうとした口元に、荒々しい手が伸びてきて、強くふさがれた。

「声、出すなよ……」

男の低い声が耳元に落ちる。
その声音には、歪んだ欲望と支配欲が混じっていた。

足をばたつかせ、必死に身体をねじる。
けれど男の体重が重く、腕を押さえられたまま動けない。

服の裾に手がかかり、めくられる。

「やだっ……やめてっ!!」

必死に叫び、抵抗する――
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