大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが
四章 飛べるのは、きみがいるから
「瀧上さん、五時台の出発便のチェックはすべて完了しています。AP88便、フランクフルト行きですが、ロシア東部で火山の噴火があったとの連絡を受け高度の変更を提案しています。詳細データはそちらに送っていますので、確認お願いします」
会議から戻ってきた瀧上に自席から声をかけると、瀧上が「早いな」と目をみはった。
「復帰してから、ますます絶好調じゃないか? 仕事熱心はいいが、また風邪を引かないようにな」
「はい、もう自己管理を怠りませんよ。パイロットはもっと厳しく健康管理していますし、わたしも負けていられません」
「パイロット、ね」
瀧上がなにか言いかけてやめる。美空も深追いせずに自分の仕事に集中した。
瀧上の言うとおり、風邪が治ってからの美空は自分でも気合いが入っていると思う。もっとも、回復したからというだけではないのは明らかだ。むしろ、大きな理由は朋也と付き合い始めたことにある。
付き合い初めてひと月半。
毎日のように顔を合わせる学生ならいざ知らず、お互いになかなか予定を合わせられない職業だ。会った回数で言えば片手で足りる。
そんな中でも、年明け四日には都合をつけてふたりで初詣に行った。航空業界の人間らしく、詣でた先は羽田空港内の羽田航空神社であるが。
(いまだに新鮮な驚きを感じるときがあるけど……たぶん順調、なんだと思う)
仕事がひと段落ついて休憩室に向かうと、自然と顔がほころんだ。ベンチに腰かけているのは、今まさに思い浮かべていた相手だ。
同僚と時間をずらして休憩しているから、ほかの社員は見当たらない。とはいえ、慌てて表情を引きしめる。
「……わざわざオペセンまで来なくても。すぐ戻らなきゃいけないでしょ……?」
「まあね。けど五分でもいいから、顔が見たかったんだ。美空も喜んでくれると嬉しいんだけど」
声を尖らせてみても、美空の内心なんてお見通しのはずだ。
会議から戻ってきた瀧上に自席から声をかけると、瀧上が「早いな」と目をみはった。
「復帰してから、ますます絶好調じゃないか? 仕事熱心はいいが、また風邪を引かないようにな」
「はい、もう自己管理を怠りませんよ。パイロットはもっと厳しく健康管理していますし、わたしも負けていられません」
「パイロット、ね」
瀧上がなにか言いかけてやめる。美空も深追いせずに自分の仕事に集中した。
瀧上の言うとおり、風邪が治ってからの美空は自分でも気合いが入っていると思う。もっとも、回復したからというだけではないのは明らかだ。むしろ、大きな理由は朋也と付き合い始めたことにある。
付き合い初めてひと月半。
毎日のように顔を合わせる学生ならいざ知らず、お互いになかなか予定を合わせられない職業だ。会った回数で言えば片手で足りる。
そんな中でも、年明け四日には都合をつけてふたりで初詣に行った。航空業界の人間らしく、詣でた先は羽田空港内の羽田航空神社であるが。
(いまだに新鮮な驚きを感じるときがあるけど……たぶん順調、なんだと思う)
仕事がひと段落ついて休憩室に向かうと、自然と顔がほころんだ。ベンチに腰かけているのは、今まさに思い浮かべていた相手だ。
同僚と時間をずらして休憩しているから、ほかの社員は見当たらない。とはいえ、慌てて表情を引きしめる。
「……わざわざオペセンまで来なくても。すぐ戻らなきゃいけないでしょ……?」
「まあね。けど五分でもいいから、顔が見たかったんだ。美空も喜んでくれると嬉しいんだけど」
声を尖らせてみても、美空の内心なんてお見通しのはずだ。