大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが
三章 あなたと心を重ねて
一度、気づいてしまったら違いは明らかだった。
パイロットとしての朋也に接するとき、美空の胸の内には、すでに存在する感情をざらりとした手で撫で暴かれた不快感があった。
しかし朋也が隣の女性と親しげにする光景は、それとはまったく異なっていた。
美空の胸に、それまでなかった感情が湧きあがってきたのだ。
オペセンの休憩室で耳にしたのはただの噂だ。朋也に恋人ができたかどうかなんて、わからない。
しかし見た目も抜群でかつ優秀な彼なら、いつ恋人ができてもおかしくない。
そう思うと、もやもやとした気持ちがくすぶる。
(ああこれ、嫉妬……かも……)
いま思えば、朋也が認めてくれたのはあくまでも運航支援の業務だった。
なのに、まるで美空自身が認められたかのように思ったのが、距離感を勘違いした原因だと思う。
だからといって勝手に裏切られた気分になって、もやもやするなんて。自分で自分に幻滅しそうだ。
(いつのまに、こんな気持ち……)
十一月もまもなく終わるという早朝。美空は本社最寄駅ではなく、羽田空港の第一ターミナル駅で降りると、深く息を吸った。鼻の奥が冷気でつんとする。
今日は遅番で、本来なら日が昇る前に出勤する必要はなかった。
だが、美空はオペセンでクルーの配置を調整する同僚から、それとなく朋也の乗る便を聞き出していた。先週、休憩室で噂話をしていたショートボブの女性だ。
それでこうして、出勤前に羽田に足を運んだのだった。
家を出たあとでコートを忘れたのに気づいたが、取りに戻る時間が惜しくてそのまま来てしまった。
(せめて、この前の態度を謝ろう。あんな風にぶつけるのは、やっぱりよくなかったよね)
美空は寒さのあまり腕をさすりながら、早足でターミナル内を移動する。ところが、搭乗口に行くまでもなかった。
保安検査場前に設置された電光掲示板には、朋也が乗務予定だった便は遅延と表示されている。
横に添えられているのは、機体の到着遅れというひと言。
パイロットとしての朋也に接するとき、美空の胸の内には、すでに存在する感情をざらりとした手で撫で暴かれた不快感があった。
しかし朋也が隣の女性と親しげにする光景は、それとはまったく異なっていた。
美空の胸に、それまでなかった感情が湧きあがってきたのだ。
オペセンの休憩室で耳にしたのはただの噂だ。朋也に恋人ができたかどうかなんて、わからない。
しかし見た目も抜群でかつ優秀な彼なら、いつ恋人ができてもおかしくない。
そう思うと、もやもやとした気持ちがくすぶる。
(ああこれ、嫉妬……かも……)
いま思えば、朋也が認めてくれたのはあくまでも運航支援の業務だった。
なのに、まるで美空自身が認められたかのように思ったのが、距離感を勘違いした原因だと思う。
だからといって勝手に裏切られた気分になって、もやもやするなんて。自分で自分に幻滅しそうだ。
(いつのまに、こんな気持ち……)
十一月もまもなく終わるという早朝。美空は本社最寄駅ではなく、羽田空港の第一ターミナル駅で降りると、深く息を吸った。鼻の奥が冷気でつんとする。
今日は遅番で、本来なら日が昇る前に出勤する必要はなかった。
だが、美空はオペセンでクルーの配置を調整する同僚から、それとなく朋也の乗る便を聞き出していた。先週、休憩室で噂話をしていたショートボブの女性だ。
それでこうして、出勤前に羽田に足を運んだのだった。
家を出たあとでコートを忘れたのに気づいたが、取りに戻る時間が惜しくてそのまま来てしまった。
(せめて、この前の態度を謝ろう。あんな風にぶつけるのは、やっぱりよくなかったよね)
美空は寒さのあまり腕をさすりながら、早足でターミナル内を移動する。ところが、搭乗口に行くまでもなかった。
保安検査場前に設置された電光掲示板には、朋也が乗務予定だった便は遅延と表示されている。
横に添えられているのは、機体の到着遅れというひと言。