エリート医務官は女騎士を徹底的に甘やかしたい

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 私はプロリア国の王都騎士団に所属する騎士だ。実家が元々騎士一家で、小さい頃から父や兄たちの姿を見てきて、自分も当たり前のように騎士になるのだと思っていた。母はありきたりな令嬢らしく振る舞えと言って来たけれど、私は父たちの剣を振るう姿にずっと憧れていた。
 だから、騎士になれて本当に嬉しかったし、これが天職だとずっと思ってきた。もう二十五歳にもなって令嬢としての結婚適齢期はとうの昔にすぎてしまったけれど、私は全然後悔していない。

 この日は、とある上流貴族が開く夜会へ警備のため騎士として出席していた。

「なあ、ニーナはああいうドレスに憧れを抱いたりしないわけ?」
 
 隣にいた同僚騎士のトマスが、小声で私に耳打ちしてくる。近くには美しいドレスに身を包んだ麗しい令嬢たちが、礼服に着飾った令息たちと優雅に談笑している。

「憧れ、ねぇ……なかったわけじゃないけど、今は全然ないかな。むしろ、動きにくそうとか思っちゃう」
「ああ、お前、それは女として終わってるね。俺は騎士としてのお前のこと好きだから別にいいけどさ」
「すみませんね、女として終わってて」

 ベッと小さく舌を出すと、トマスはくすくすと笑っている。そんな時、どこからともなく黄色い歓声が聞こえてくる。
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