両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】

1 私への罰

雨が降りそう……
どんよりと重たい空を見上げてから時計を見る。
終業時間まであと数分。
もう机の上を片付け始めている人もいた。
金曜日のこの時間は心なしか全員の顔が明るく見える。

「どうするー?」

「行くに決まってるでしょ。だって、取引先の営業で一番イケメン率高いんだよ?」

「四対四にしたいよね。あと一人はどうしよー」

私には関係のないこと―――そう思って机の上に散らばっていた書類を集めた。
雨が降る前に早く帰りたい。
そんなことを思いながら。

「あのー、雪元(ゆきもと)さんも一緒に飲み会に行きませんか?かっこいい人いるかもしれませんよ?」

後輩の桜田(さくらだ)さんが近づいてきた。
お願いする時だけ少しだけ高くなる声。
彼女はそれに気づいているのだろうか。
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