両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】

15 今の私は

―――唯冬と暮らして一週間たった。
アパートの契約は月末までにして、荷物は週末に少しずつ片付けに行くことにした。
これはもう『彼氏と同棲』ってやつよね?
きっとそうよね?
ジッとお弁当を見た。
今日は二人分のお弁当を作ってから出てきた。
唯冬は昨日から作曲の仕事をしていて、眠ったのは明け方近くだと知っている。
私を起こさないように静かに部屋に入ってきて、髪をなでたから。
本当はどんな顔をしているのか見たかったけど、疲れているだろうと思って目を閉じていた。
早く休んでほしくて。
私が出勤する時間になっても唯冬は目を覚まさず、朝ご飯も食べないで眠っていた。
起こさないように気をつけてメモ紙を添えてお弁当を置いてきたけど、ちゃんと食べてくれたかな。
あれだけ私に体調管理を言っておいて自分はほとんど徹夜って。
仕事とはいえど、納得いかないわ。
なんだか、不公平な気がすると思いながら、唐揚げを口に放り込んだ。
うん。生姜がきいておいしい。

「あれ? 雪元さん、お弁当ですか?」

隣の席に座る後輩の桜田さんの言葉にどきっとして卵を箸から落としそうになって、真剣な顔でバッとつかんだ。
セーフ!
この動揺を悟られるわけにはいかない。

「え、ええ。健康のためにお弁当にしたの」

よく私を見てるわね。
< 110 / 227 >

この作品をシェア

pagetop