両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
20 お見通し?
私の引っ越しを終えた後、唯冬はコンサートの練習と普段の仕事が重なり忙しくなって、ゆっくり話をする時間もなくなった。
これが終われば、少しは落ち着くと言っていたけど……
私のほうはいつもと変わらずない日々を過ごしていた。
会社に通勤し、帰ればピアノを弾くという日々。
調律してあるピアノを弾けることに感謝しながら。
でも―――
「雪元さん。どうかしたんですか。そんなカビのはえたパンを食べたみたいな顔をして」
遠慮のカケラもない後輩、桜田さんが私に声をかけてきた。
カビのはえたって……
もう少し言いようがあるわよね?
「ちょっとね」
「もしかして、彼氏とうまくいってないとか?」
「そ、そうじゃないわよ」
唯冬は変わらず優しいし、家事だって家政婦さんが通いできてくれていて、私がピアノを弾ける時間を多くとれるように気をつかってくれている。
そこまで私に尽くしてくれなくてもいいのにってくらい尽くしてくれる。
不満なんか―――
「もしかして結婚問題ですか?」
「えっ!?ち、ちがっ……」
「順調に付き合っていて、いざ結婚となると問題が出てくるパターンもありますからね」
「たとえばどんな?」
「相手がお金持ちで財産目あてじゃないのかって言われたとか、家の格があわないとかで別れたって聞きますよ」
「やっぱり……そういうのあるのね……」
これが終われば、少しは落ち着くと言っていたけど……
私のほうはいつもと変わらずない日々を過ごしていた。
会社に通勤し、帰ればピアノを弾くという日々。
調律してあるピアノを弾けることに感謝しながら。
でも―――
「雪元さん。どうかしたんですか。そんなカビのはえたパンを食べたみたいな顔をして」
遠慮のカケラもない後輩、桜田さんが私に声をかけてきた。
カビのはえたって……
もう少し言いようがあるわよね?
「ちょっとね」
「もしかして、彼氏とうまくいってないとか?」
「そ、そうじゃないわよ」
唯冬は変わらず優しいし、家事だって家政婦さんが通いできてくれていて、私がピアノを弾ける時間を多くとれるように気をつかってくれている。
そこまで私に尽くしてくれなくてもいいのにってくらい尽くしてくれる。
不満なんか―――
「もしかして結婚問題ですか?」
「えっ!?ち、ちがっ……」
「順調に付き合っていて、いざ結婚となると問題が出てくるパターンもありますからね」
「たとえばどんな?」
「相手がお金持ちで財産目あてじゃないのかって言われたとか、家の格があわないとかで別れたって聞きますよ」
「やっぱり……そういうのあるのね……」