両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】

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コンサート当日、マンションの部屋に水色のノースリーブロングドレスとアクセサリーと靴、バッグが届けられた。
それを眺めること数秒。

「え?どういうこと?」

このドレスコードは紛れもなく奏者スタイルよね……
いくら私がピアノから離れてましたと言ったところでこれはわかるわよ?
しばらく、そのドレスを眺めていたけれど、待っていれば普通の服に変わるわけもなく、宰田(さいだ)さんが来る前に準備をすませた。
ドレスの上から上着を着た。
これはいったいどういうことなのか……
唯冬に連絡しようとしたけど、やめた。
コンサート前で忙しいのに迷惑になってしまう。
でも、どうしたら!
悶々と悩んでいると、ピンポーンとインターホンが鳴った。

「雪元さん。準備できましたか?駐車場までお願いします。唯冬さんから部屋には入るなって言われているので」

宰田さんはドア越しに伝えてくれた。
つまり、これは私の質問攻めにあわないように宰田さんを逃がすための作戦。
慌ててドアを開けたけど、もう宰田さんはいない。
なんてすばやい……
宰田さんもグルかもしれない。

「なにを企んでいるの?」

まさか私にコンサートで演奏させるつもり?
そんなことあえりえない。
素人同然なんだから。
駐車場に行くと車の中で宰田さんが待機していた。

「いやぁー!雪元さん。よくお似合いですね」

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