両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】

24 選んだ道は

コンサートホールを出てやってきたのは高級ホテルだった。
ディナーはライトアップされた大きな噴水、緑の多い庭園があるレストラン。
『共演祝いだ』と唯冬は言ってくれたけど、こんなすごいところ初めてだった。
すべての席にはキャンドルが置かれて、灯りがゆらゆらと水面を照らしている。
色鮮やかな花に囲まれ、大きな窓からは夜景が見える。
空中庭園のような空間のせいか、少し夢心地になっていた。
そんな私をよそに唯冬はレストランのスタッフ達と知り合いなのか、親し気に挨拶をかわしている。

「唯冬はこの店、よく来るの?」

「ああ。仕事で演奏依頼があってね。女性とくるのは#千愛__ちさ__#が初めてだから安心して」

くすっと笑われて、ハッとした。
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