両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
26 同じ闇を【唯冬】
千愛の両親は神経質というか、厳格そうなきっちりとした人達だった。
息苦しくないのかというくらい首元までボタンをとめ、地味な色の服を着ていた。
家は普通の一般家庭だが、リビングは家族写真や置物などの雑貨類はいっさいなく、殺風景に感じた。
「結婚?あんな子と結婚なんてどうかしてますよ」
母親の言うセリフだろうか。
俺の両親はまだマシな部類だな。
表面上だけでも夫婦を取り繕っているとは言え、子供を捨てるようなことだけはしない。
当たり前のことが当たり前じゃなかったのだとここにきて知った。
父親のほうは千愛と俺達が載っている雑誌を手にして怒りで震えていた。
なぜ、娘が称賛されていて怒るのか理解できない。
それも一度は諦めたピアニストの道を再び歩もうとすることを伝えたにもかかわらず、それにすら腹を立てていた。
こうなると、なにをしても気に入らないのだろうな。
渋木の会社で懇意にしている弁護士を帯同し、千愛の実家に来たのは正解だった。
「あんな出来の悪い娘と結婚してどうする気だ」
出来の悪い?
記事を読んでその感想なのか。
「とてもいい演奏だった。今までて一番。ご両親をコンサートにご招待するべきだったかな」
「聴きたくもない!」