両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】

11 変わりたいなら


朝食を食べ、会社まで送ってもらったけれど一緒にいることに対して違和感がない。
他人なんだから、もっと壁があってもいいはずなのに。
しかも、私と唯冬はほとんど初対面。
ずっと前から一緒にいるような感覚だった。
私のことならなんでもわかってる。
もしかすると私以上に―――
はぁっとため息をつきながら、データを打ち込んだ。

「雪元さん、今日はどうしたの?」

「え、えっ!?なにか私、おかしいですか!?」

動揺して声が上ずってしまった。

「いつもより明るい表情をしているから」

「そうですか?」

「ええ。いつも難しい顔で仕事をしてるのに今日は力が抜けているっていうか」

「す、すみません。しまりがない顔で」

「暗い顔をしているよりいいわ」

向かいの席にいる先輩は毎日私の顔を見ていたせいか、ちょっとした変化にも気づいてしまうらしい。
難しい顔、暗い顔―――そうかもれない。
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