心が壊れたパティシエが10歳の子供に恋をして、永遠の愛を誓うまで
出版社の朝は忙しい。営業部も編集部も。けれど今日は、たぶん俺が――いや、間違いなく俺が、誰よりも忙しい。というか、単純に仕事が多すぎる。
「真逢、今日発送する新刊が届いたぞ! 発送準備、十五時前までに終わらせろよ。絶対に!!」
耳元で怒鳴られた。怒鳴ったのは佐戸奏さん。俺が働いている出版社の少年漫画編集部の編集長だ。
奏さんは坊主頭だけど、目元が垂れていて肌も白く、見た目は全然怖くない。背も百六十七センチで俺より低いし。……まあ、怒鳴られるのは普通に嫌だけど。
「う……はい、頑張ります」
「真逢、最近ちゃんと寝てるか? クマできてるぞ。目やにもついてるし。とりあえず顔、洗ってこい。発送準備はそのあとでいいからな」
「すみません、ありがとうございます」
デスクに鞄を置くと、俺はすぐに廊下に出て男子トイレに向かった。
「はあ……」
洗面台の前に立つと、鏡に自分の顔が映った。
目尻が吊り上がった切れ長の瞳は真っ赤に充血していて、縁には黄色いゴミ。汚いな。
あ、白髪がある。
数えてみると、十本くらいあった。
一か月前に、髪のけ全体を銀髪に染めたのに。もうこんなに増えているのか。……まあ当然か。あの時から、まともな生活なんて送ってないもんな。
水が冷たくて、気持ちいい。
髪が濡れた。
肩まである髪の毛先をペーパータオルで拭いて、その濡れたタオルをゴミ箱に向かって投げた。けれど、タオルはゴミ箱の前に落ちた。
「はあ……」
なんで入らないんだよ。
落ちたタオルを拾って、今度はちゃんとゴミ箱に捨てた。
「真逢、今日発送する新刊が届いたぞ! 発送準備、十五時前までに終わらせろよ。絶対に!!」
耳元で怒鳴られた。怒鳴ったのは佐戸奏さん。俺が働いている出版社の少年漫画編集部の編集長だ。
奏さんは坊主頭だけど、目元が垂れていて肌も白く、見た目は全然怖くない。背も百六十七センチで俺より低いし。……まあ、怒鳴られるのは普通に嫌だけど。
「う……はい、頑張ります」
「真逢、最近ちゃんと寝てるか? クマできてるぞ。目やにもついてるし。とりあえず顔、洗ってこい。発送準備はそのあとでいいからな」
「すみません、ありがとうございます」
デスクに鞄を置くと、俺はすぐに廊下に出て男子トイレに向かった。
「はあ……」
洗面台の前に立つと、鏡に自分の顔が映った。
目尻が吊り上がった切れ長の瞳は真っ赤に充血していて、縁には黄色いゴミ。汚いな。
あ、白髪がある。
数えてみると、十本くらいあった。
一か月前に、髪のけ全体を銀髪に染めたのに。もうこんなに増えているのか。……まあ当然か。あの時から、まともな生活なんて送ってないもんな。
水が冷たくて、気持ちいい。
髪が濡れた。
肩まである髪の毛先をペーパータオルで拭いて、その濡れたタオルをゴミ箱に向かって投げた。けれど、タオルはゴミ箱の前に落ちた。
「はあ……」
なんで入らないんだよ。
落ちたタオルを拾って、今度はちゃんとゴミ箱に捨てた。