心が壊れたパティシエが10歳の子供に恋をして、永遠の愛を誓うまで
三章 黒幕はだあれ


 喜津愛と暮らすようになって、早いもので半年が経った。
 仕事は順調そのもので、門倉がいなくなった今、トラブルもなくスムーズに回っている。喜津愛はケーキを楽しみにしながら、俺の留守中もお利口に待ってくれるようになった。編集部にまで押しかけてきたときは焦ったけど、「ちゃんと帰ってくるから」って言い聞かせたら、納得してくれた。


 ただ、一つだけ解決していない問題がある。喜津愛の“親”について、何も分からないままだ。無理に聞かずにいたせいで、半年経っても、どんな家庭にいたのかもはっきりしていない。だからこそ、ちゃんとした形にしなきゃならないと思っている。喜津愛が中学生になる前に、俺を正式な保護者として迎えられるようにすること。そのために、勉強が厳しければフリースクールでもいいし、将来的には高認でもなんでも取らせて、高校まではなんとか行かせたい。その後は、喜津愛の自由にさせよう。引きこもっても構わない。喜津愛は、俺の大切な存在だから。


 ……自分の独占欲が嫌になる時もあるけれど。


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