失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
追いかけてくる過去と揺るぎない今
 ぐずついた天気が続くが、たまに晴れるとその日差しの強さに驚く。セミの鳴き声も聞こえるようになり、例年より梅雨明けが早いのかもしれない。

 六月下旬、エアコンを冷房にするか除湿にするか迷う日々。職場はやや冷房が効きすぎているので、どちらかと言えば寒がりの私はカーディガンなどの上着は欠かせなかった。これが今年はいつまで続くのだろう。

 仕事を終え、ふうっとため息をつきながらマンションに向かう。金曜日の夜、駅ですれ違う人々は心なしかいつもより浮かれている気がする。

 週末の休みを前にして、気持ちが浮上するのは社会人あるあるだ。飲みに行ったり、予定を入れていたりする人が多いのかもしれない。

 結婚する前は私も、友人や同僚とよく飲みに行ったり、ひとりで出かけたりしていた。我ながらアクティブな方だと思う。

 でも今は、光輝さんとマンションでゆっくり過ごす時間がなによりも楽しみになっている。

 結婚するってこういうことなのかな。誰かの帰りを待つってこんなにも幸せなんだ。

 しかし、光輝さんと映画館デートをやり直した日以降、彼はずっと忙しい日々を送っている。いつ帰ってきているのかわからないときさえあるくらいだ。

 極力、待つようにしているけれど、仕事の疲れもあって先に寝てしまう方が多い。そのたびに自己嫌悪に陥って、不安な気持ちが増幅していく。

 私、妻として少しは光輝さんの役に立てているのかな。
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