失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
結婚の決め手と初めて見る笑顔
「鷹本さん、結婚したって本当ですか?」
「ああ」
昼休憩の時間、職場で後輩の金平から声をかけられ短く答える。
大学を卒業し、国家公務員一種の試験に合格して警察庁に入庁。いわゆるキャリア組としてこの世界に入り、三十歳までは自動的に昇任するものの、ここから間引きが始まり、ふるいにかけられていく。
数少ない椅子に座り続けた者だけが、さらにこの先に進めるのだ。
警察本部での勤務を経て、今は警察庁警備局外事情報部外事課に配属されている。
「これは、各所から残念な悲鳴が聞こえてきますね。奥さん、どこで知り合った人なんですか? 恋人はいないって言っていたのに隠していたってことですよね? 結婚の決め手は?」
「……黙秘する」
矢継ぎ早に尋ねてくる金平に短く返す。沈黙は金。余計なことは言わないのが得策だ。しかし金平は調子よく続ける。
「まーた。どうせ上には書類諸々提出しているんでしょう?」
警察官が結婚する場合、相手の経歴や身辺調査の結果などを上層部に提出しなくてはならない。ほかの職業ならプライバシーの侵害や人権問題だと訴えられそうなものだが、それが必要であり許されるのが警察官だ。
だからなのか、警察官は職場結婚や、関係者から縁者を紹介されるパターンも多い。最初から相手の身柄が保証されているのは明確だからだ。
「竹中局長、残念がるでしょうね。お嬢さんを鷹本さんと結婚させたいってすごく張りきっていましたから」
一瞬、苦虫を噛みつぶしたような気持ちになる。しかし顔には出さない。警備局局長である竹中警視監には目をかけてもらっていた。そんな彼から溺愛している娘を妻にどうかと声をかけられたのは、ここに配属されしばらくしてからだ。
「ああ」
昼休憩の時間、職場で後輩の金平から声をかけられ短く答える。
大学を卒業し、国家公務員一種の試験に合格して警察庁に入庁。いわゆるキャリア組としてこの世界に入り、三十歳までは自動的に昇任するものの、ここから間引きが始まり、ふるいにかけられていく。
数少ない椅子に座り続けた者だけが、さらにこの先に進めるのだ。
警察本部での勤務を経て、今は警察庁警備局外事情報部外事課に配属されている。
「これは、各所から残念な悲鳴が聞こえてきますね。奥さん、どこで知り合った人なんですか? 恋人はいないって言っていたのに隠していたってことですよね? 結婚の決め手は?」
「……黙秘する」
矢継ぎ早に尋ねてくる金平に短く返す。沈黙は金。余計なことは言わないのが得策だ。しかし金平は調子よく続ける。
「まーた。どうせ上には書類諸々提出しているんでしょう?」
警察官が結婚する場合、相手の経歴や身辺調査の結果などを上層部に提出しなくてはならない。ほかの職業ならプライバシーの侵害や人権問題だと訴えられそうなものだが、それが必要であり許されるのが警察官だ。
だからなのか、警察官は職場結婚や、関係者から縁者を紹介されるパターンも多い。最初から相手の身柄が保証されているのは明確だからだ。
「竹中局長、残念がるでしょうね。お嬢さんを鷹本さんと結婚させたいってすごく張りきっていましたから」
一瞬、苦虫を噛みつぶしたような気持ちになる。しかし顔には出さない。警備局局長である竹中警視監には目をかけてもらっていた。そんな彼から溺愛している娘を妻にどうかと声をかけられたのは、ここに配属されしばらくしてからだ。