恋慕~再会した強引御曹司に甘く囚われて~
9.「眞玖しかほしくない」
水族館デートの日から半月が経ち、八月になった。
本格的な夏が到来し、毎日うだるような暑さが続いている。
そして今もまだ私は五十嵐さんとの会話について匡に話せていない。
私の心の奥底では、彼女の台詞がじりじりと焦げついている。
「ちょっと眞玖!」
金曜日の就業時刻終了間際、会議後に廊下を歩いていたところ親友に声をかけられた。
帰社したばかりなのか、バッグを肩にかけ紙袋を手にしている。
「お疲れ様、蘭。取引先からの帰り?」
「眞玖もお疲れ様……ってちょっとなんでそんなに落ち着いてるのよ」
「え?」
「まさか知らないの?」
焦った様子の蘭に簡易休憩所へ引っ張られる。
男性社員がすぐ隣の喫煙室にふたりいるのみで、休憩所は無人だった。
置いてあるベンチに私とともに腰掛けた親友は、私にスマートフォンの画面を突きつける。
【藤宮副社長、五十嵐不動産ご令嬢と婚約内定】
差し出された画面に映るのはふたりの写真と大きな見出しだった。
「このニュース、今朝から配信されていたらしいの。うちの専務と藤宮副社長は旧知の仲なうえ、現在提携して業務を進めているでしょ? さっき取引先で聞かれて驚いたの」
説明する親友の声が、頭の中を素通りしていく。
記事が頭の中を駆け巡るが内容が理解できない。
目の前が真っ黒に染まった気がした。
本格的な夏が到来し、毎日うだるような暑さが続いている。
そして今もまだ私は五十嵐さんとの会話について匡に話せていない。
私の心の奥底では、彼女の台詞がじりじりと焦げついている。
「ちょっと眞玖!」
金曜日の就業時刻終了間際、会議後に廊下を歩いていたところ親友に声をかけられた。
帰社したばかりなのか、バッグを肩にかけ紙袋を手にしている。
「お疲れ様、蘭。取引先からの帰り?」
「眞玖もお疲れ様……ってちょっとなんでそんなに落ち着いてるのよ」
「え?」
「まさか知らないの?」
焦った様子の蘭に簡易休憩所へ引っ張られる。
男性社員がすぐ隣の喫煙室にふたりいるのみで、休憩所は無人だった。
置いてあるベンチに私とともに腰掛けた親友は、私にスマートフォンの画面を突きつける。
【藤宮副社長、五十嵐不動産ご令嬢と婚約内定】
差し出された画面に映るのはふたりの写真と大きな見出しだった。
「このニュース、今朝から配信されていたらしいの。うちの専務と藤宮副社長は旧知の仲なうえ、現在提携して業務を進めているでしょ? さっき取引先で聞かれて驚いたの」
説明する親友の声が、頭の中を素通りしていく。
記事が頭の中を駆け巡るが内容が理解できない。
目の前が真っ黒に染まった気がした。